第二回 多くの食材を自らの手で



 


 
飯島が作る料理を語る上で外せないのが食材である。「望山亭ことぶき」で使う食材は「走り」のものと海魚を除き、殆どが地元信州産。中でも松茸は宿が所有する山中より、野菜は自家農園から収穫している。また、信州名物の山菜も宿近くの山より、川魚は同じく周辺の川で網や仕掛けを使って生け獲りにしている。
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宿所有の山の奥深くまで入った木々の間で松茸を採るのは宿主の「久保田茂登 くぼた しげと」。もうすぐ70歳とは思えないほどがっしりした体つきは、さすがに山男といった印象。かなりの急勾が続く山中は素人だと歩くだけでもかなりキツイが、久保田は細い杖で巧みに体を支えながらスイスイと進んで行く。大きく太い松茸の他にも何種類ものキノコと栗が収穫できる。

 

柔らかな肉質と低カロリー高タンパクが特徴の長野県ブランド鶏「信州福味鶏」の上に松茸を乗せた「朴葉焼」。定番料理の「焼き松茸」や「炮烙焼き」も贅沢な使い方でより香り高く楽しめる。専用献立の中で何種類も出される松茸料理。

 

野菜は宿から車で数分先にある自家農園で栽培。夏は長ネギ、キュウリ、トウモロコシ、バナナピーマン、ジャガイモ、カボチャ、ブルーベリー。秋はナス、赤カブ、小松菜、オクラ、ミョウガ、万願寺トウガラシ、チンゲンサイ。冬は白菜、長芋、大根、赤大根、青大根、ふゆな、リンゴなど多種多様に渡る。
新鮮野菜を素揚げにした「野菜揚げ」は、メジマグロ節と柚子を使った自家製ポン酢につけて食べる。蓋物として出す「野菜の炊き合わせ」。採れたてだからこその歯ごたえや旨味を伝えるために、いかにシンプルな料理にするかを考え続けている。
 

川漁の許可を持っているため、季節の川魚を網や籠など種類に応じた仕掛けで獲る。それが一番新鮮で安全であると飯島は言う。春はウグイに鮎、秋のカジカに冬のハヤ、獲れたての魚は種類と大きさに合わせ、塩焼きや唐揚げなどシンプルな料理で出すことで美味しさと季節感を伝える。緑が生い繁る山の中で訳もなく山菜を見つけ、鋭い鉈で瞬く間に刈り取っていく。何時間にも渡る収穫の後は、すぐ宿に戻りアク抜きなどの作業が始まる。自ら採った食材を鮮やかに下ごしらえする横顔を眺めると、献立を思案している表情が浮かんでいる。手間をかけ技巧を駆使した凝った料理と、素材そのものの美味さを引き出す引き算の料理。緩急自在なベテラン料理長「飯島祐三」の修行は16歳、東京・浅草の魚屋で始まる。

 
 
 
 


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東京の浅草、上田の旅館や割烹屋で修行後、50代で「鹿教湯温泉 望山亭ことぶき」に入り料理長に就任yaeno-7_s1
長野県  鹿教湯温泉 望山亭ことぶき

http://b-kotobuki.com

〒386-0323 長野県上田市鹿教湯温泉